長春八極拳の練功法には有名な鉄砂掌以外にも器具を使った練習方法が存在します。他の門派でも行われる樹木を使って打ったり蹴ったりする打樁、壁に体当たりする靠山壁以外にいくつか紹介すると刁球(粘土で五指の入る円筒状の形の物を作り手首、肘、肩に負荷を掛けて丹田からの勁力を養成する練習)。拧掃箒把(竹の枝を束ねて針金でまとめた捻り棒)。绷弓(竹をバネとして複数使って連結させた目標の板を拳で打つ練功器具でどことなく巻藁を発展させたような印象があります)。
掌板(かつて譚吉堂師爺が練習されていたとされる練功法で地中にまで入っている分厚く重い板を掌で打ち上げる練習)。
煽球功(趙平師叔のされていた練功法、買い物籠のようなバスケットの形の入れ物に小石を詰めて、それを指で引っ掻けるように提げながら打ち出す、或は掴む練習)。塌板(東北三兄弟の一人、趙平楠の行っていた練功法でシーソーの形態の器具で、練習者の反対側に土嚢のような重りを付け、練習者側の持ち上がってる板を叩き落とす練習(金剛ハ式の伏虎))。木桩=木人(カスタマイズとして硬いスプリングに取っ手を付けて握って捻ったり、反動で腹部を打ち付け排打功を練習)。木人は他に抱肘、大纏、外把樁など練習の範囲が広かったようです。
かつて譚吉堂師爺は「どう学んで、どう練習して、どう使うか」と言うことをしょっちゅう言われてました。その言葉をお借りすれば、これは開発者が技として「型(単式)をこう使いたい」という目的から、逆算して「ならばこう練習する」という考えで練功器具を作っていったと思われます。実際に李英老師は長春でもともと袋を吊り下げて打ったり蹴ったりするタイプの鉄砂掌の練功を、袋からボクシングで使われる革製のダブルのパンチングボールに改良されて成果をあげられてます。他にも故孫生亭師叔の著作「長春八極拳全集」には沙包功、吸球功、抹板などが紹介されています。もともとは練習の効率が上がるよう霍殿閣が創ったものですが、それぞれの技のためにそれぞれ数だけどんどん発展したものと思われます。もちろんスタートは筋力的なアップからですが、目的は勁力、勁道、身体操作であるのは明白です。なので現代に置き換えれば木刀でも鉄の棒でも1本歯下駄でもサンドバッグでも本人が「こう技を使うから、こう練習する」に当てはまればそれで良いと思います。